令和6年4月1日から前任の中島弘道先生のあとを引き継いで病院長を拝命しました。病院長の責を負うのは私が7代目になります。
千葉県こども病院は、昭和63年10月に千葉県により開設された小児総合医療施設で、今年は36年目になります。この間に築かれた歴史の中で、当院で治療を受けた子どもたちの中から、当院の職員となって帰ってきてくれた人たちも沢山います。そうしたかつての子どもたちと一緒に働くことは、小児医療に携わってきた人間として大きな喜び、励みになります。
医療技術はこの30年の間も格段の進歩を遂げていますが、本当の意味で治せる病気はそれほど増えていないのも現実です。基本理念にも示しておりますように、私たち職員は、すべてのこどもが私たちに実現可能な最高水準の医療と保健サービスを受けられるように日々努力していますが、結果として期待に十分お答えできないこともあり、申し訳ないことと思っております。そのような中で、多くの人に「普通」と思ってもらえるのと違った状況で生活をしていく子どもたちがいます。近年、多様性を受け入れることの重要性が強調されていますが、人はそれぞれの個性を持っています。その個性は、生まれながらのものだけでなく、日々の生活や他者との関わりの中から形作られたものです。子どもたちが家族や社会の中で生きていく時間が作れたことが、私たち職員の努力、献身の結果であることを誇りとして、こども病院の職員一同日々の仕事を続けています。
日本は少子高齢化社会を迎えています。千葉県の1年間の出生数は、昭和50(1975)年に77416人のピークを迎えたあと、当院開設の昭和63(1988)年には56462人、その後減少が続き、令和5(2023)年の速報値では、36779人と当院開設時の65%にまで減っています。少子化の歪みが社会に大きなインパクトを与えることと想像しますが、未来の社会は子どもたちが作り上げていくものです。社会の中における小児医療の必要性が低くなることはないと思います。現在の子どもたちのために、未来の子どもたちのために、こども病院は必要とされる役割を果たし続けられるよう、すべての職員とともに頑張っていきたいと思います。